月と森



時は満ちた。

神の手から逃れた子供が動き出す時が来た。

まだ早すぎると?
それでも子供は、この世に平等な社会を齎さねばと、動き出してしまったのだ。
直線に進む人と車は止められない。
カーブがあったとしても、まっすぐ、ただまっすぐと進むのだ。


「……」


子供は足元を照らす、
まだ子供の自分を笑うような形の太陽の影をじっと見てから歩き出した。

今日は、その平等な社会を作るための一人目の犠牲を要請しに来た帰りだった。

笑う月が森を化け物へと変わらせる。
普通の子供であれば、そこで怯えて、すくんでしますところ。
しかし、彼は仮にもメシヤ、悪魔くんとも言われてる異能児。
フンと鼻を鳴らした。

今よりずっと小さい頃に強請って買ってもらった軽井沢の神聖な地。
それは今だけは、夜だけは、恐ろしい異形の地へと見せてくれる。
それでも子供は怯えたりなどしなかった。

しかし、子供は道に迷っていた。

それを表に出して慌てたりなどしてないが、迷ってはいた。
どこをどう歩けばいいものかと思っていた。

こういうとき、歩いたりするのは逆効果。
夜の森は危険だ、歩かずに火をたいて朝を待つべきなのだ。
それを子供は知っていた。それでも歩いていた。

それを知ってるかのように月が笑っている。

何故だろう。メシヤとはいえ子供。子供ゆえの好奇心なのかもしれない。
子供を駆り立てたものが何だかは判らない。
しかし、子供は歩き進んでいた。



一心に。


ただまっすぐ。


わき目も降らず。


視線も真っ直。


まるで今の彼のように。



するとどうだ。
なんと彼は一人で、子供の足で、家に辿り着いた。
「随分遅いお帰りでしたね」 待っていた別荘番は夕食を温めなおしながら、子供に構う。
子供はただ無表情に、「ああ」と返事だか何だか判らない答えを。
夕食を済ませ、彼は自室に篭り、難解な本を読む。
…窓から入る月の明かり。
ふと彼は外を見る。すると笑った月が、雲に隠れていた。


子供はにやりと笑った。




彼の歩むこれからの未知なる人生も、闇夜の森のようになる。

出方次第。


その時、月は笑っているだろうか?








「かぎみや」さんから頂戴した記念すべき初の小説です!

ありがとうございます。

月夜の森を迷いながら歩く松下。
その心に不安と迷いがあっても彼の運命は意思はただまっすぐ進むことを強要する。

冴えた月夜をはっきり心に想い浮かばせる美しい小説です!


彼の運命の前途もいつか暖かい場所にたどり着くことを祈って・・。


無理言ってすみませんでした〜、そしてありがとうございました〜(感動)!



松下には明るい太陽より静かな月が似合いますね(賛同者求む)