ケーキの結末。
「これは僕のモノだ!」
「いえ、私のものです!」
目の前で繰り広げられる、子供の喧嘩に、蛙男は小さくため息を吐いた。
「もうそのぐらいにしろ、佐藤。大人げないぞ。メシアに譲ったらどうだ」
「嫌ですっ!!」
佐藤は、必死の形相で振り向いた。
「そうやって、いつもメシアに譲ってきたじゃないですか!」
「だがな、佐藤」
蛙男はゆっくり、鼻から息を吐きだした。
「そういうのは、子供に譲るものだ」
「蛙男……僕を子供扱いしたな…?」
松下の低い声に、蛙男は慌てて言った。
「い、いえ…。そのようなことは」
「口出しはするな、蛙男!今、僕は一人の人間として、こいつと戦っているのだ!!」
「そうですよ!第一、もうメシアは子供でも何でもありませんよっ!」
「何だと。なにが言いたいんだ、佐藤」
松下は、佐藤を睨みつけた。
「僕が人間じゃないとでも言いたいのか?」
「さすがは、メシア。よく自分をお分かりになられてますね」
「僕に喧嘩を売るのは、それぐらいにしろ」
松下はいつもより低い声(ドスのきいた声ともいう)で、佐藤を真っ直ぐ見据えた。
「一気にいくぞ、ケリをつけてやる」
「ええ、望むところです!!」
「おい、やめとけ佐藤。メシアも、その程度の人間に、何も業など…」
「蛙男は引っ込んでいろ」
松下は蛙男に注意すると、素早く佐藤に目を戻した。
二人の間を、異常なほどどす黒い空気が流れていくーー
やがて、時計の針がかちりと、音をたてて斜めに傾いた… その瞬間!
「いくぞっっ」
「はいっ!!」
二人が同時に、ケーキに飛びかかるような勢いで、手を伸ばした。
次の瞬間、佐藤と松下の手が、ケーキの上で重なった。
「…!」
「!!」
二人は真っ赤になり、同時に互いの手を引っ込めた。
(い、今……佐藤と、手が…)
(メシアと手が……重なった…!)
別の意味での異様な空気が、二人の間に置かれたケーキと、蛙男を包んだ。
おわり
可愛い連中だな、お前ら。
蜜柑様ありがとうございました!
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