【まちあわせ】

「あーいたいた、スギタ!いやあ道が込んでてさあ」
「…いや、それはいいけど、なんでお前ここにいるの?」
「ん?ケータイ着信拒否ってるでしょ?だから家に直接かけたら出かけたっていうから」
「お前とこの店、来たことあったっけ?」
「ないよ、でもこういう雰囲気の店スギタ好きそうだなってアタリをつけたらビンゴ!」
「・・・・・・」
「どしたの?神妙な顔して」
「いや、ストーカー規制法ってどこまで適用されるのかなって」


【世界でただひとり】

オレはこの世界って名前の糞ダメで生まれた。
人間ってのはみんな醜いゴミクズだと物心付いたガキの頃から思ってた。
どうにもくだらない糞ダメの中ででゴミクズどもを見下して生きてきた。
あれは大学に入ってすぐだったな。
オレは初めてゴミクズじゃないまともな「人間」を見たんだ。
そいつがスギタって名前なのもまだ知らなかったけどこれはもう運命だと思ったね。
スギタってさ、不細工じゃないけどこれといって飛びぬけた美形ってわけでもないじゃん?
群集にまぎれちゃったらどこにいるか分からないくらいだろ?
でもオレにはこの世で一番価値のある存在に思えたんだ。
どうしてかなんて理由は知らない。
だからてっきり運命の人だと思い込んじゃった。
オレは初めて見たまともな人間に思い切って声をかけたよ。
そしたら「ゴミクズの分際で俺に話しかけんじゃねえよ」って言われた。
笑える。


【センセーショナル】

「よし!スギタ今夜はオレがご馳走する!オレの手作り料理がいいか!それとも高級フレンチいってみる!?」
「お前がいればそれでいいよ」



「いやあ、つい発作的に窓から飛び降りちゃったけど下に緩衝材積んだトラックが止まってて助かったわ、オレって強運」
「チッ」


【世界で一番君が好き】

金曜日の就業後、いわゆる一昔前「花金」と呼ばれた時間帯。
スギタはノガミのアパートにいた。
本来ならば健康な男子たるもの恋人とのデートを楽しみたいところであったが、生憎、現在スギタは一人身だった。
奇しくも4日ほど前にフラれたのだ。
またも、である。
相手は会社の女性ではなく珍しく数少ない友達のツテで知り合った生花店に勤める女だった。
上手いこと付き合い始めて2ヶ月ほどたったある日、突然向こうから「さよなら」と言われた。
理由なんてサッパリ思い当たらなかったがそこは男のプライド、何も聞かずに「わかった」とだけ言って終わった。
ここ数年、スギタはすっかりフラれの達人になりつつあった。

流し台に向かって背中を向けたままのノガミが突然切出した。
「ところでスギタ、こないだの花屋の女とどこまでいってたの?」
スギタの缶ビールを持った手が止まる。
「…なんでお前知ってるの?俺誰にも言って無いんだけど…」
ノガミはスギタの言うところの「世界一醜悪な微笑」を浮かべて振り返った。
「公表しなけりゃ罪にならないんだよね?」
エプロンのポケットからレコーダーを取り出して再生ボタンを押した、以下はその内容である。
(あ、俺だけど。今度の日曜ひまが出来そうなんだけど久しぶりにどっか行こうか?)
レコーダーを通して効く声は多少違和感があったがそれは間違いなくスギタ自身の声だった。
(えー!ほんと、嬉しい、じゃあ、あたし一度東京ミッドタウンいきたかったんだけど)
一方は間違いなく彼女の声である。
「…てめぇ…盗聴してやがったのか!このド変態!!!」
ノガミはレコーダーを止めると今度はそれをしまい、代わりに携帯電話を取り出した。
どこかに電話している。
「…あ、オレだけど香澄ちゃん?」
スギタはギョッとした、その香澄ちゃんこそ今の盗聴されていた会話の相手、彼女の名前である。
「悪いけどさぁ、もう終わりにしようや、え?…だからそう言うこと、キミに飽きたの、分かる?…ひどくないでしょ?元々遊びだったんだから。え?知らないよそんなこと、とにかくじゃあね、バイバイ」
ノガミが携帯を無常に切る。
「え、とね電話番号消去…っとはい終り!」
その間わずか1分に満たない早業である。
一連のノガミの行為をスギタは唖然を通り越して呆然と見ていた。
ていうか、これ、何?
「あの女さあ、オレがちょっとモーションかけただけでコロッとこっちに転んだんだよ、尻軽もいいところだよな?よかったねスギタあんまり親しくなる前に判って、オレに感謝してよ!」
満面の笑みで両手を広げるノガミに対して、スギタが言える事など何一つ見つからなかった。


【結果論】

「あのさあ、ノガミ、どうしてお前って後先考えないで行動すんの?」
「だって、いちいち結果を考えてたらなんも出来ないじゃん」
「…で?この後始末をどう付ける気だよ?」
「わかんない、考えてなかったし、スギタなんとかしてよ」


【血と肉】

「あ、ノガミさん!」
「やあ、彩ちゃん久しぶり、こんな時間まで部活動?」
「あ、いえ、ちがいます、あたし部活してないから、お友達と遊んでて…」

こいつはスギタの妹。
8歳年下の女子高生。
あれで意外と家族愛の強いスギタはこの難しい年頃の妹を、これで案外可愛がってる。
それでもって、こいつはどうやらオレに惚れてるらしい。
前にスギタんち行ったときに一目惚れされたようだ。
美しさは罪だね、まったく。
でもあのスギタと同じ血が流れてるってだけで無条件で愛されてるこのメスガキが、オレは嫌い。

「あれ?ノガミさん…家、逆方向じゃなかったでしたっけ?」
「そうだけど暗い夜道を彩ちゃんみたいな可愛い子一人で帰させて何かあったりしたら、オレ君の兄さんに殺されちゃうからね、送ってくよ」

おやおや真っ赤になったよ、純情ぶりやがって、発情すんな雌豚。
まあお前の兄さんにだったら殺されてみたいけどね。
あれ?よく見たらこのメスガキの手、スギタと形が似てる。
…やっぱり同じ血と肉で出来てんだ…。
…このメスガキを犯したら、スギタ、オレを殺してくれるかな?
もっとよく見たらこいつの目と鼻と口もやっぱりスギタに似てる…やべ、興奮してきた。


【プライス】

「お願い、スギタ、オレをぎゅっと抱きしめて」
「ふざけんな死ね」
「500円あげるから」
「断る」
「1000円」
「殺す」
「1500円」
「やだ」
「2000円」
「やだ、絶対、やだ」
「2500円」
「おいで」

ちなみにスギタのそのときの気分次第でレートは変動します。


【素朴な】

Q.そんなにノガミのことが嫌ならなんでいまだにつきあってんの?
A.…他に友達も少なくて…


【拝啓、神様】

どうか許してください。
他に彼を手に入れる方法を知らなかったんです。
いいえ。
謝っているのはこれ以外の方法をあえて知ろうとしなかったことに対してです。


【人生訓】

はじめからこうなってました。
だからおれがわるいんじゃありません。


【事情聴取】

いえ、ですから何度も言ってるでしょ?
スギタは昨日徹夜だったんです、だから今日は振替休日ってことで会社休んでたんですよ。
あいつって結構根詰めるタイプなんですよねー、最近不眠気味だとも言ってたし、だからオレ心配になっちゃって。
だもんだからちゃんと寝てるかどうか一時間毎に電話で確認したんです。
そしたらケータイ着信拒否られて、それで家デンにかけたんですけどそれもモジュラー引っこ抜かれたらしくて。
だからオレも半休とってスギタんち行って二階のスギタの部屋にはしごで登って窓を叩いてたんです。
オレは心底心配してただけなのに何も通報しなくたっていいと思いませんか?ねえお巡りさん。


【スギタイズム】

「勘違いすんなよ!お前なんか赤の他人以上知り合い未満だからな!」


【遅刻の理由】

「ごめんごめん、いや出掛けにさスーパースターデストロイヤーが頭の上に落ちてきて刺さって血が出てもう大変だったのよ」
「スーパースターデストロイヤーが刺さったんじゃしょうがないな」


【メール】

『ノガミ、俺本当はお前のこと嫌いじゃないんだ、むしろ大好きだ、でも俺は弱虫だから直接はいえなかった、許してくれ』
…スギタ…ううん、そんなのいいんだよ、こうして文章にしてくれただけでもオレは満足さ!
惜しむらくはこのメール、発信がオレのケータイからだってことだ。


【ボクシング・ヘレナ】

「暇つぶしになんか映画でも落として観るか」
「オレ、映画はあんま詳しくないんだよね、スギタ面白そうなヤツ選んでよ」
「お前と恋愛映画なんて見る気しねえしなあ…アクションものがいいか?それともホラー?コメディ?サスペンス?スプラッタ?」
「ホラーとスプラッタは怖いからパス!すっげー笑えるヤツかサスペンスかド派手なアクションものがいい」
「じゃその条件で絞り込んでみましょ、一度見たやつじゃつまらないしなあ…さてどれにするか…」
「あ、ねえ、この『ボクシング・ヘレナ』ってアクション?女ボクサーもの?」
「あーこれか、観た事はないけどあらすじは聞いたことがあるな、ボクシングって殴りあう例のアレじゃなくてだな…確かヘレナって美女に一方的に惚れたサイコ野郎がその女の手足を切…」
「ん?どしたのスギタ」
「あ、いや、なんでもない、確か全っ然全く面白くもなんとも無いって評判だったからこれはやめよう、次、次」
「なんでスギタ、冷や汗かいてるの?」
「…参考にされると非常に困る…」


【信仰】

「なんで人間ってさ神様なんているかどうかもわからないものを信じたんだろう?」
「全然判らん、多分馬鹿だったんだろう」


【信頼】

「オレってそんなに信用ない?」
「んー、まあ付き合いも長いしな」


【フリーフォール】

「あああちくしょう!ジェットコースターまでは我慢できたけどこれはダメだ!もう死んでも乗らねえ!金積まれても断る!こんなの人間の乗り物じゃねえ!!」
「そんな大したことなかっ
たじゃん、一瞬だし、スギタってほんと絶叫系苦手だよね」
「馬鹿!てめえ今ので俺の寿命は確実に11.18km/sは縮んだぞ!」
「第二宇宙速度程度の寿命が縮んだところでどうだってのよ」
「塵も積もればって言葉を知らねえのか!」
「あと何万回乗る気なの?」



【効果のほど】

スギタそれなに?
へえ、アイヌの魔除け?
そんなものどこから?へえ、お母さんの北海道旅行土産なんだ。
え?わざわざ魔除けが欲しいって言ったの?なんでまた?
スギタってそんなに信心深かったっけ?
ちょっと貸してみ?
ただの木の輪切りに見えるけど、でもなんか渋いね、イカす。
え?もういらないの?なんで?効果がない?なんで?何が?


【同僚のタカシナさん】

スギタ君、気が付いてるのかな?
いつも「俺は」じゃなくて「俺らは」っていうのよね。
それってノガミ君と自分を同一の存在だと主張してるみたいに聞こえるんだけど、
そのくせ「俺とノガミをセットにすんな!」っていつも怒るのよね。
指摘してあげた方がいいのかしら?ま、いっか。
何だかんだいって、私、あの二人見てるの好きだから。


【好き≠信頼】

「彼氏の浮気が発覚したの」
「うわぁ、死ぬほど興味ねえ」
「それでも聞かす、でもね、彼、反省してるしもう絶対しないから信じてって言うんだけど、一度裏切られたらもう一度信じるのってすごく難しくない?」
「馬鹿だなタカシナ、それはお前の方が悪いだろ?」
「どうしてよ?」
「だって信じる信じないってさ、それ相手に対する過剰な理想の押し付けじゃん?どうして愛と信頼がイコールになるわけ?大体オレなんかスギタのこと大好きだけどあいつに命預けるくらいならさっさと自分で首吊った方が早いと思ってるよ、スギタってそれくらい信用できねえもん、もちろん向こうもオレを信用してねえし」
「だけど」
「醜い部分、嫌いな部分、どうしても受け入れられない部分も全部ひっくるめて「その人」じゃんよ、なんで理想どおりに作り変えようとすんのよ?意味わかんねえ、自分のためかよ?」
「そうね、確かに私が悪かったかも」
「かも、じゃなくて確実に悪ぃよ」
「そうねー、ほんと、反省したわ、確かに信じるか信じないかは完全に私の方の問題であって彼の責任じゃないもんね」
「お前は女にしては物分りがいいから案外嫌いじゃない」
「ありがと、どうでもいいけどいまどき性差別発言丸出しねー」


【合図】

「おお、眺めいいなあ」
地上30階のマンションのベランダから身を乗り出して、
背中を向けて警戒もせず、
いつもは某殺し屋のような台詞をはくくせに、
俺の後ろに回るなって、
まったく無防備なのは突き落とせって意味なのかな?
多分そうなんだろう。
せーの。


【はい、あーん】

「スギタ、食う?」
「ペットボトルの蓋なんか食わねえよ、なんでお前いつも俺にそこら辺に落ちてる石とか手乗りインコとか折れ釘とか訳わかんないもん食わそうとするわけ?」


【犯罪者は南に逃げるという、でもこれは逃亡じゃないし犯罪者でもないから】

「あ、起きた」
「…頭、痛え…」
「そうだろうねえ、だってスギタ、夕べ酔っ払って帰ろうとしてうちのアパートの階段落ちたんだよ」
「どうりで、頭だけじゃなくて体中痛えわけだ」
「絶対死んだと思ったのにな」
「ところでこれ俺の車だよな?お前免許持ってねーのになに運転してんだよ」
「免許なくても運転くらい出来るよ」
「朝日が眩しいぜ、ところで朝日でいいんだよな?夕日じゃないよな?」
「朝日だよ、前にスギタ、酒で記憶なくしたことがない、って自慢してたけど記憶なくしたね」
「馬鹿、それとこれは全然違う」
「いつも思うんだけどお酒ってどこが美味しいの?オレ一滴も飲めないから全然わかんねえ」
「なら何でいつもいい酒そろえてんの?」
「スギタホイホイ」
「まあ、知ってて訊いたけどね」
「スギタこそ一人で飲んでて楽しいの?オレ見てるだけなのに」
「それなりに、それはそうと、ここどこ?」
「さあ?とりあえず首都高乗っててきとーに北を目指した、でも池袋でだいぶ迷ったからまだ首都圏内だと思う」
「なんで病院連れて行かないかな?」
「絶対死んだと思ったから」
「そうか。北へ向かう理由の方は?」
「どっかに埋めようと思ったんだけどどこもかしこも舗装されてるから田舎の方に行けばと思って、単純に」
「そうか」
「川口JCはずいぶん前に通過したよ、あとスコップも買ってきた」
「今日って何曜日だっけ?」
「木曜日だよ、やっぱ頭打ったね」
「単なるど忘れだ、次のSAかPAで止まれよ無免許」
「スギタだって昨夜飲酒運転しようとしたくせに」
「酔ったうちはいんねーよ」
「階段落ちたのに?」
「あれは」
「記憶障害が出てるところを見ると硬膜下血腫起きてるね、このままほうっておけばスギタ絶対死ぬわ」
「あ、おいSAの標識出てるぞ、上河内、あと2キロだとよ、そこで運転変われ」
「いつ死ぬか判らないやつに高速を運転させたくねえよ」
「無免の方もだいぶ問題だぞ」
「なあ、腹へらね?」
「だからSAが…あー通り過ぎた」
「平均150キロは出してるからね、あっという間よ」
「マジあぶねえって、ていうかどこまで行く気だよ、あと会社どーすんの」
「どうでもいいよ、この際どれも」
「なあ、ノガミ、お前夕べ俺を突き落としたろ?」
「うん」


【純愛】

相手に一生覚えててもらうには、百の友愛を示すより一発ぶん殴った方が早いと思う。


【背中合わせ】

スギタとオレの距離?
そうねえ、多分0距離かと思わせておいて実は地球一周しちゃってたって感じかな?
多分。
ありがち?


【またもや未遂】

「俺、生きてるんだけどまだ埋める気?」
「うん」
「ノガミ知ってっか?死体埋めるなら最低でも1.8メートルの深さの穴掘らなきゃいけないんだぜ、お前そんな体力あんの?」
「ないかも」
「だよなあ、お前俺より貧弱な体系だもん」
「途中休憩入れながら、死臭がする前までにはなんとか」
「いや、お前のことだから途中でたるくなって放棄しそう」
「それもあるかも」
「それ以前に俺死体じゃねえし」
「いいの、オレが埋めると決めたら埋めるの」
「ならお前はそのあとどうすんの?」
「決めてない、どうしよう?」
「その場で首吊るとか」
「ナンセンス」
「自首するのは?」
「国家権力は嫌いなの」
「隠し通す自信アリ?」
「無理でしょ、普通に考えて」
「引き返すって選択は?」
「それが一番無難かなあ」
「やり通すんじゃなかったのかよ」
「まあ、いいじゃん」
「そういうやつだよな、お前は」
「またの機会にするよ、埋めるのは」
「そうしてくれ」
「あ、一緒に埋まるってのはどうよ?」
「うわあ、積極的に遠慮してえ、狭っ苦しそうだし、それに第一誰が土かぶせてくれんのよ?」
「そっか、だめだわ」
「お前バカだろ」
「なにを今更」


【nova】

「星っていいよな、だって死ぬときに一番派手に輝くんだぜ?人間なんて先細って消える運命じゃん、みじめなもんよ」
「そうかな?星は星なりに苦労もあるんじゃないかな」
「あるかぁ?たとえばどんなよ?」
「オレは人間だからわからないよ、でも、静かに消えるのも悪くないと思うよ、オレはね」
「お前にしては意外な答えだな」
「もちろんスギタと一緒って条件付だけど」
「てめえなんかと老後まで一緒に過ごしたくねーよ」
「別に歳食ってとかってそんな遠い話じゃなくてさ」
「お前と心中する気もないからな」
「オレも別にわざわざスギタの了解取る気はないよ」
「もしもし、おまわりさん?」


【不可領域】

いつも言ってることだけど。ノガミ、俺はお前が嫌いだ。
でも時々だけどすごいと思うところもある、例えば人の目とか一般という括りから外れることを全く恐れないこと。そういうの俺には出来ないから、ある意味たいした奴だと思う。お前は、何の躊躇いもなく同じ男の俺を好きだと言う。場所も時も選ばずに突然そういうことを言う、今更だけど周りからはそうとうおかしな目で見られているんだろうな。慣れって怖いよな、最初は臆面なくそういうことを人前で平気でいわれるたびにやめろって怒鳴ったもんだけど、最近じゃ、ハイハイで済ませるようになっちまったもんな。「模範的」から外れることを何より恐れる気の小せえ俺にとってお前という何もかもが規格外の存在はあらゆる意味で脅威だったもんだけどそれも昔の話。お前は飽きっぽいけど俺に対しては結構長く続いてるよな、感心する。正直俺みたいなあまり優れたところのない男の、どこがいいのか分からないけど。でも時々考えるんだ、ある日突然お前に「もうオレ、スギタに飽きちゃった、バイバイ」って言われるんじゃないかとさ。お前のことだから十分ありえる話だし。別にそれが不安だとか怖いとかそういうことをいってるんじゃない。お前のことなんて本当にどうでもいいんだ俺は。だけどそれはちょっと困る。なんでかっていうと。今のお前って俺の生活圏内に踏み込みすぎてるから。お前いつも必ず俺の視界に入るところにいるだろ?話しかけりゃ必ず返事を返してくるだろ?もうそれが当たり前になってるって言うか。知ってのとおり俺は急激な変化の嫌いな人間なんだ。安定した毎日が急に変化することがすごいストレスになる。だからさ、ノガミ、お前急にいなくなったりはするなよな。やっぱりお前のことは好きじゃないし、俺のことはあきらめて欲しいとは思ってる。だからといって急に消えられたら困るんだよ。いいか?俺が気が付かない程度に、徐々に、ゆっくり、遠ざかれ。この俺が、お前なんかにご丁寧に頼んでるんだから言うとおりにしろよ。「あれ?そういえばあいついつからいなかったっけ?」ってある日ふと気が付くくらいに、ごく自然に、ゆっくりと消えていなくなれ。俺がそうしろといってるんだから逆らうな。じゃないと俺が困る。お前のことで俺が泣くのはおかしいから。そんなのは絶対におかしいから。酷いわがままを言っているのは自分でもわかってる。わかってるんだよ。
だから何だ。


【希少金属】

「あれ?ノガミ、お前そんなネックレスとかしてたっけ?てかそれもしかして金?」
「うん?ああこれね、昨日ね、なんかくれるっていうから貰った」
「誰によ?」
「えーと、誰だっけ?名前までは知らない、確か経理の女、だった、かな?」
「お前ねえ…名前も知らないヒトから物貰っちゃ駄目だろ」
「別にいいじゃん、くれるのは向こうの勝手だろ?」
「誰だか知らないけど気の毒な女だな、お前のような男だとも知らずに」
「ほんと報われないよね、オレ、ホモなのにねー」
「ていうか、多分それブランド物のすっげえ高価いやつじゃねえの?」
「うん、ここにカルティエのロゴが入ってる、K18とも」
「マジブランドもんかよ?すげえ、いいよなあ、俺もそんなもの女にプレゼントされてえよ」
「何言ってるの、駄目だよ、スギタ」
「あ?だってくれるのは向こうの勝手なんだろ?まあ、確かに貢いでくれそうな女もいないけどさ」
「違うよ、別に誰に何貰ってもいいよ、もらえるもんはもらっておいた方がいいよ、でもこんなのは駄目だよ」
「何がよ?こんなのってブランド物ってこと?」
「違う、貴金属とかアクセサリーとかだよ、スギタには似合わない、飾りとかスギタらしくない、特に金属類なんてそんなのは絶対に駄目、スギタはスギタのままが一番いいんだから、下手な飾りなんてつけたらスギタの綺麗さが逆に失われちゃうだろ、スギタはいわば純鉄なんだよ、純鉄は硬いけど同時に脆いでしょ?でもまじりっけのない気高い金属なんだよ、これってまさにスギタでしょ、だから混ぜ物をしちゃ駄目、ピアスとかもだめ、オレはしてもいいけどスギタは絶対駄目だからね」
「なに?その、妙なテンション」
「分かってよ、ニュアンスで」
「あー、ええと?つまり俺は結婚指輪とかも駄目ってこと?」
「そうだよ、スギタにそんなもの絶対に似合うわけないんだから」
「…俺、このメガネ、多分フレームが金属だけど…」
「あ、それだけは最高に似合ってるから全然OK、むしろそれは一生外さないでね」
「なんかお前言ってることが支離滅裂なんですけど頭大丈夫?」



【ノット・ゴナ・ゲット・アス】

スギタの死体とのドライブはなんだかバカみたいに楽しかった。
池袋で迷ったときはかなりイライラしたけど、だって道が複雑すぎてナビもあんまり役に立たなかったし、どこの道指してんのか判んねーっての!
気分を紛らわせようとカーステレオつけたらCDモードになっててなんでか「Ace of Base」でやんの。
ちょっと趣味ズレてる上に古くない?スギタ。
でも「All That She Wants」は懐かしいね、いい感じ。
ああ、そういえばスギタって基本はデスメタルだっけ?それに比べればオレ的にはいい方だ。デスメタルは理解できない。
だってあれ、歌ってんだか吐いてんだか。
―…頭、痛え…
あれ?生きてた。
でも別に残念とかいう気はしないなー。
きっとオレはスギタがスギタなら生きてても死んでてもかまわないんだろう。
でもスギタがスギタじゃなくなるってどういうことだろ?自分で言っておいてよくわかんないや。
―なあ、ノガミ、お前夕べ俺を突き落としたろ?
うん。やっぱ覚えてた?
でもまだ予断を許さないけどね、このまま走り続けたらもしかしたら岩手県に入る頃には今度こそ完全にスギタ死ぬかもしれないし。
それはそれで楽しみなんだよねオレ。
あのね、ちゃんと検査キットもって来たよ、うん、リトマス試験紙、アルカリ性の土を探してそこに埋めるつもり、白骨化するのが早そうだしそしたら携帯に便利だしょ?
全てはオレの気分次第だってとこが最高にいい感じ。
このまま逆走とかすれば、平日の高速道路はすいてるけど、強引に対向車と正面衝突で二人とも自爆とかもできるし。
このまま延々ドライブもできるし、まあ日本なんて国土はたかが知れてるしすぐ海に突き当たっちゃうけどね。
そういや日本ってさ国土はたいして大きくないけど、国土に占める海岸線の長さは世界でも上位なんだってね、伊能忠敬もよくまあがんばったもんだよね。
ねえ、スギタ、どこ行きたい?
どこでも連れて行ってあげるよ。


【秋の終わりに冬の海を見に車を北へ走らせた】

「なんだよチクショウ!あいつ、クソッ!手ぇ抜きやがったな!あれほど2メートルは掘り下げろって念を押したのに!やっぱり手抜きしやがった!クソッタレ!」

第一発見者はカップルで、カーセックスをしようと人気のない道に車を止めたら、なんでも道路わきの土の中から人の手が出てきたそうです。
被害者は20代中頃くらいの若い男性で、土中60センチほどのところに埋められていたようです。
発見者のカップル曰く、その男性は土の中から這い出てくるなり誰かに向かって悪態を吐いていたとか。
それは、土の中から人が出てきたのですからそのカップルも相当ショックを受けているようですがそちらの方はとりあえずは問題ないとして…。
肝心の被害者ですが今は一応、話せる状態です、これから事情聴取に向かいます、頭部を殴られた痕跡はありましたがそれ以外に外傷もなく医者の話では命に別状はないようです。
とはいえ経過を見るためにまだ入院していますが、しかし問題なのが…

「警察のものですがちょっとお話よろしいでしょうか?」
「ええ、まあ、もう頭痛もないし大丈夫です」
「まずお名前をお聞かせいただけますか?」
「それがまったく覚えていないんです、俺は誰なんでしょうか?」
「…やはりまだ思い出せませんか…」
「まあ医者の話だと頭殴られて一度は死んでたらしいですからね、記憶がいつ戻るか戻らないかもよく分からないそうですし、刑事さん俺の身元調べてくれませんかね?」
「えー、はい、もちろん調べていますが所持品の中には身分を証明するものが何もなかったものですから今のところは、ですが貴方にご家族がいればおそらくは失踪届けが出されているでしょうし、身に着けていた衣類なども調べていますからじき判ると思います」
「ところで眼鏡は見つかりました?」
「…いいえ残念ながら現場にはなかったようです」
「参ったなあ、眼鏡がないと、俺30センチ先も見えないんですよね、家に帰れば換えの眼鏡はあるんですけど」
「え?ご自宅がどこか思い出されたんですか?」
「いいえ、全然、というかそれを思い出してたらとっくに換えの眼鏡取りに戻ってますよ」
「でも換えの眼鏡があるということとご自分が眼鏡をかけていたということは覚えていらっしゃるんですね」
「ええ、だって刑事さんのお顔も見えませんからね、あ、これ別にガン飛ばしてるわけじゃないんですよ?」
「…それではお聞きしますが…その、通報したカップルの話だと、貴方は土中から自力で這い出してきた後「あいつ」とやらに浅く埋められたことに対して文句を言っていたそうなんですが、それは覚えていらっしゃいますか?」
「はい、だって腹立つでしょ?俺は人様の墓穴くらいしっかり掘れって言ったのにこの有様なんですから、あいつ絶対腕が疲れたとか面倒くさくなったとかで途中放棄したんですよ」
「その『あいつ』というのは誰なんですか?貴方に暴行を加えた人物と同じなんですか?」
「多分そうです、でも名前や素性までは思い出せません」
「…でもその人物との会話を覚えていらっしゃるんですか、なぜそういう会話の運びになったのかとか、犯人の動機とか断片的にでも…」
「さあ、まったくわかりません、でも多分いつ殺されてもおかしくなかったんでしょうね」
「え?それはどういうことです?…失礼ですが貴方はそういった危険な立場にあったのですか?」
「だから覚えていませんってば、でも多分カタギの人間ですよ」
「するとその人物に何らかの恨みをかっていたんですか?」
「動機は恨みとか金とかじゃないですよ、きっと俺が隙を見せたのが悪いんでしょうね、単純に」
「はあ」
「記憶がないんではっきりとは言えませんけど、とにかく俺は真っ当な人間ですよ、まあ運が悪かったというか世界一のアホに好かれたのが運の尽きというか、とにかく俺も悪かったのは確かですよ、一番気を許してはいけないヤツの前で油断したんですからね」
「はあ」
「要するにやるかやられるかだったんですよ、逆の立場もありえたと思いますよ、多分ね、すみません、俺もこれ以上のことは覚えてないもので」


【表切り】(例の殺し合いのシーンから)

「悪いなスギタ、フェニックスはオレが預かる」
「ノガミ、早まるな、俺は!」

バーン

ついでにお前もな。
どっちかつーとこっちが本命だったり。


【負けず、曲げぬ心】(例の殺し合いのシーンから)

ナス主任、あんたにスギタは殺させない。
スギタを殺すのはオレだけだ。
スギタに殺されるのはオレだけで十分だ。
あんたは入ってくんなよ。
邪魔するならあんたも殺してやる。
ああ、だからスギタを殺すんじゃねえってば!
ちくしょうぶっ殺してやる!
スギタを殺していいのはオレだけだ!
おまえを殺してやる。
あ、殺された。
オレを殺していいのはスギタだけだっての!
ちくしょうぶっ殺してやる!
スギタを殺していいのはオレだけだ!
オレだけなんだ!
オレを殺していいのもスギタだけだ!
スギタだけなんだ!
ちくしょうぶっ殺してやる。
あ、スギタがナスを殺すなよ!
オレだけ殺せよ!
ちくしょうぶっ殺してやる。
あははやったやったスギタを殺した。
あ、ナスに殺された。
スギタにも殺された。
おれも二人を何度も殺した。


【春の嵐】

ぼんやりした頭でスギタを見上げる。
視界が不鮮明なのは、どうやら目に入った血の所為らしい。
ああ、いいんだよ、スギタ、オレがお前を怒らせたんだから、
オレを酒の瓶で殴ったことなんて、許すよ。
頭だから血がすごいね。
そんなに青い顔しなくていいよ、大丈夫大丈夫、このくらいで死にゃしねーって。
でもその顔、オレを心配してくれたんだね。嬉しいよ。
いつもオレを殺してもなんとも思わないんじゃないかって言ってたからさ。
そこまで豪胆でもないよね、スギタは、むしろ繊細。
だからああ言えばこういう行動に出るって判ってた。
オレにとっては必然性のある計略。
うん、瓶は早々簡単に割れないから、ただ額がちょっと切れただけ。
それだけで、スギタは明日きっといつもより優しくしてくれる筈だから。
だからわざと殴らせたんだよ、もっともっと血よ出ろ、もっともっとスギタを怯えさせるんだ。


【ささくれ】

「俺、お前が死んでも多分泣かない」
どういう話の流れだったかは忘れたけど、スギタがそう言った。
嘘だ、多分スギタなら泣く。
でもオレは「うん、そうだろうね」とたいして興味もなさそうに返事を返した
「でもオレはスギタが死んだら世界を殺すよ」
これは本気だった、スギタのいない世界に何の価値があるというのか。
泣くとか泣かないとか既にそういうレベルになくて。
ただオレの価値観からすればたとえそれが絵空事でも本気だった。
ふとスギタの横顔を見たらなんだか妙に辛そうだった、いや辛そうと言うより真剣で鋭い目をしてた。
オレの想いはスギタには重過ぎるんだろう、でもしょうがない本心だから。
それに今のオレにスギタの負担まで考えてる余裕なんて無いんだから。
「あのね」
誰も寄せ付けたくなさそうな鋭いまなざしのまま床を見つめるスギタに向かって言った。
「残念ながらオレは死なないし、スギタも死なないよ」
スギタはさっきより僅かに眉間に皺を寄せて「うん、だろうな」とオレと同じでたいして興味もなさそうな風に返事を返した。
大丈夫だよ、世界がオレたちのために存在してなくても、オレはお前を守るから。
絵空事でも誇大妄想でもなんでもいい、オレの言うことは絶対だから。


【期待】

「ちんぽって間抜けな形だよね?ねえスギタ」
「はあ?」
「いやだからさ、なんつーかエロくないよねあれって、滑稽さが先にきてさ」
「はあ」
「いっそのこと切っちゃった方がいいと思うんだけどどうかな?ねえスギタ」
「…いいんでないの、お前がそう思うなら切れば、お前なら結構な美女になると思うぞ?」
「いやそんな間抜けなものがスギタにぶら下がってると思うとなんか落ち着かないんだよね、だからねえスギタ、切ってもよくない?」
「俺に期待すんのかよ!」


【カルネアデスの板】

「スギタとオレがそういう状況になったら?そりゃあれさ、全力で板切れを奪ってスギタを叩き落す、そんでスギタが沈んだのを見届けたらオレも板を離して沈む。だってスギタのいない世界に生きててもしょーがねえもん、オレのいない世界にスギタ一人を生かすわけにもいかねえし、まあね、そういうこと」


【テクニカルなカツオども】

「なあノガミ、お前って本当にホモなの?」
「んー、スギタしか好きになったことがないから分かんないな、でも多分そうなんじゃない?どうしたん、急に」
「いやあんまりヒマだったからさ」
「じゃあランドサットでもハッキングして紛争地域の様子でも見てみる?面白そうじゃん」
「簡単に言うなあ、バレたらお縄だってのに…よし、やるか」
「さすがオレのスギタ、そうこなくちゃ」
「お前のじゃねえよ」


【深淵】

「スギタかっこいい!抱いて」
ドカッ
「うおおたまらん!スギタ!やらせろ!」
グシャッ
「なんかディープな世界ねえ…」


【究極エゴイスト】

「オレが死んだらスギタを誰かに取られちゃうじゃん、だからぜってー死なねえよ、しぶとくしつこく生き延びてやんよ」
「ノガミ君、相手の幸せを考えたことはないの?」
「ないね!」
「ああ、そう」


【雲のように】

「オレはきっとスギタを知るずっと前から誰かもわからずにとにかくスギタを探してたよ」
「俺はお前に逢いたくなかったよ」


【今年はそれでも大人し目】

今年のバレンタインデーはもちろんスギタにチョコあげちゃう。
オレってけっこうマメなんだよね、だからもちろん手作りで決まり。
そのチョコ、スギタの口に入るんだよね?
そうだ、じゃあ、オレの血でも混ぜちゃう?ワオ、それってまるっきりイっちゃってる中学生のメスガキの行動まんま。
でもそれいい、スギタの中にオレの血が入るとか、考えただけで興奮するぜえ。やっべ。ゾクゾク。

「スギタ、バレンタイーン!」
満面の笑みでやたら可愛らしいラッピングをほどこしたチョコレートをノガミが差し出す。
意外なことに、それに対してスギタもにっこりと笑い返し、素直にそれを受け取る。
だが、次の瞬間真顔になったスギタはそれをそのままゴミ箱に鮮やかなまでにシュートした。
「ノガミ、てめえ今年はなに仕込みやがった?去年は睡眠薬で、一昨年はトリカブトの毒、その前は致死量相当の向精神薬、そのまた前はなに入れたのか考えたくもねーけどあれ固まってもいなかったぞ」
「あれえ?もしかしてオレってワンパターン?」


【これが愛じゃ】

「スギタの気持ちは言葉じゃ現せねーんだよ、だからスギタはオレが話しかけると返事の代わりに殴ったり蹴ったりするわけ、いわゆる肉体言語ってやつ?」
「ノガミ君、それたぶん違う、言葉を返すのもめんどくさいだけだと思うの」


【友達の輪】

こないだスギタと街を歩いてたらさ、通行人の肩がスギタに当たったんだよ。
で、スギタがそいつに「あ、スミマセン」って謝ったから、なんかついカッとなってスギタの頭掴んでそこにあった車のボンネットに叩きつけて言ったんだ「オレ以外のやつを見るんじゃねーよ」って。
そしたらスギタもさすがに鼻血出しながら驚いた顔してた。
まあその後警察沙汰になったけど。
留置所のお巡りさんに「まーた君か!」って言われた。
「どーも、すっかり顔馴染みッスね」ってオレも挨拶しておいた。
人間関係が広がるのはいいことだね。


【ノガミイズム】

ノガミ「恋に性別は関係ない!」
スギタ「ある!一番重要な問題だ!」


【ハウマッチ】

「スギタさあ、こないだ2500円で抱きつかせてくれたんだよね、そんでもう500円金額上乗せしたらめっちゃ機械的に抱きしめ返してくれたんだ、で、もう500円上乗せしたらすっげー棒読みで「ノ・ガ・ミ・ス・キ」って言ってくれたんだ、だからさ、今度100万くらい積んでどこまでしてくれるか試してみようかと思うんだけどどう思う?」
「そうね、やってみたら?3500円で好きって言ってくれるなら5万くらいで結婚してくれるかもよ?100万あったら、そうね、銀河系くらい征服してくれるんじゃない?よくわかんないけど」


【タイムリープ】

「タイムマシンがあったら26年前にタイムトラベルしたい!そんでスギタの父親になりたい!でもオレの子種じゃスギタが生まれないからスギタママであるスギタ トキエさん(旧姓イノウエ トキエ)がスギタパパに種付けられた時点でスギタパパを謀殺して未亡人であるスギタママを口説き落として結婚して正々堂々とスギタの父親になる!そしたらスギタの誕生から成長過程まで見放題だぜー!あと男親とは成人後も一緒に風呂に入るのが常識だと教え込んで裸も見放題にしてやるぜー!うおおおおおおならば全財産叩いてでもーっ」
「またノガミのヤツがアホなこと考えてる…妄想するのは自由だけど口に出すなよ」


【ひゃくとおばん】

この管轄で有名、というほどではないけれど「また例の」といえば「ああ」と通じるくらいには浸透している案件がある。
頻繁に同じ人物から、同じ人物への通報があること。
場合によっては殺害予告があった、付き纏われた、一方的な暴力を振るわれた等。
通報があった場合、明らかな偽計であると判明しない限りは通報した人物の家にまで聴取に出向かなければならない。
たとえばそれが虚偽であった場合は通報者に刑法のきつい鉄槌を与え、また真実のものであれば周辺を見回ったり或いはその不審者を任意同行しなければならない。
今のところその通報に偽りがあったためしがない、なのでその都度取り締まらなければならないのだが、毎回同じ人物を検挙していればある種の共通認識が浸透していくのも無理はない。
通報者は嘘はついていないし被疑者は毎回罪を認める。
それにしては被害を受けた側とされる人物がそれ以上は追求しないし、被疑者はいつも笑顔で「お勤めご苦労様です」とあっけらかんとしてる。
そのうちに警察署内でこれは一種のプレイでは?という声が囁かれ始めるのは時間の問題だった。
暗に警察を使ったSMプレイをしているのなら言語道断ではあるけれど当座の問題としてそれを取り締まれる確固たる刑法が存在していないことだ。
もう一つの問題は両者共に男性であるということだ。
(ホモカップルの特殊プレイにつき合わされるのは勘弁してくれ!)



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